お粥、お茶漬けとはどう違うのか
こんなことも聞いたことがあった。「茶粥ってさ、普通の白いお粥とどう違うの? それからふつうのお茶漬けとはどう違うの?」と。
ジジはこういう、「お粥は、もともと少しのご飯でもお腹がいっぱいになるようにと水で膨らませる知恵だった。貧しかったからね。ご飯の量に対して10倍くらいの水でも食べられる。味付けはほんの薄い塩味。塩だって貴重品だったんだよ。病人にお粥がいいってのは実は間違いで、米粒の固い皮膜は消化に負担なんだけど、病気のときぐらい、ふだんは食べられないお米を食べられるのがうれしいんだ。ほら、病気の時って、バナナとかリンゴとか卵とか、パインの缶詰とかふだんは食べられないご馳走をもらえて、それだけで気分が少し元気になっただろう。その程度の効果はあったんだね。」
「お茶漬けは、お粥よりもずっと贅沢だと思うな。食事のしめにとか、ご飯が冷えたからとか……お茶漬けを食べられるってことは、普通にご飯が食べられる条件がないとできなかっただろうな。それとかけるお茶だって、緑茶というか正しい意味の煎茶の三番茶ぐらいを使うのはこれも贅沢だ。ふつうは、味噌汁の残りをかけたり、だし汁の残りをかけたりする。この方が、お茶漬けだけで食べるよりも、おかずがなくてすむ。料亭などで出るお茶漬けは、ご飯の上に焼き鮭や梅干しやノリを載せ、わさびも添えてくれる。でも、茶粥は、煎茶なんか使えないから、茶葉の茎や固い葉を焙じて香りだけを香ばしくして作った「焙じ茶」を使う。色も薄い茶色だから決して上品じゃない。」
「茶粥は、白粥ともお茶漬けとも違う。焙じ茶の香ばしさと塩味だけで食べる素朴なものだよ。でも、これに慣れてくると、冷えても美味しいと思えるし、冷えたご飯に熱い茶粥をかけて食べてもまた美味しい。茶粥で最高の贅沢は、新米を使って米から煮出したものだね。ねっとりした粘りが全然違う。これにもし、塩干しイカの焼いたのとか、塩漬けナスとか、煮しめの残りとかがあれば、もう大変なご馳走だったよ」
少しだけど、なんとなくわかった気もしたけど、覚えているのは、こんな話をする時のジジは、ホントに楽しそうだったということ。たぶん、ジジに好きなだけ「茶粥」の話をしてもいいよ、っていったら1週間ぐらいしたと思う。ジジは、「茶粥」だけを話かったんじゃないと思う。それがこの島暮らしや、自分の子供時代や、ジジが大好きだったジジのジジやジジのババの思い出に繋がっていたからだろう。